結核の「感染力」に関わる遺伝子群を特定 空気中での生存戦略とは?

結核の「感染力」に関わる遺伝子群を特定 空気中での生存戦略とは?

サイエンス出版部 発行書籍

いまだ世界中で猛威を振るう感染症、結核。その病原菌である結核菌は、咳やくしゃみによって空気中に放出された後、どのようにして過酷な環境を生き延び、次の人へと感染を広げていくのでしょうか? この「空中サバイバル術」の謎を解き明かすことは、結核の「感染の鎖」を断ち切る上で極めて重要です。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、この長年の疑問に迫る画期的な発見をしました。彼らは、結核菌が空中を漂う際に生存に不可欠となる一群の「サバイバル遺伝子」を特定。これらの遺伝子の多くは、これまで病気を引き起こす上では重要ではないと考えられていましたが、実は空気中での生存、つまり「感染力」にこそ深く関わっていたのです。この発見は、結核菌の弱点を突き、感染拡大そのものを防ぐ新しい治療薬開発への道を開くかもしれません。 2025年3月7日に「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)」で発表されたこの研究は、結核との戦いに新たな光を当てるものです。論文タイトルは「Candidate Transmission Survival Genome of Mycobacterium tuberculosis(結核菌の伝播生存候補ゲノム)」です。 「病原体が空気中を循環する際に、これらの急激な変化をどのように生き延びるかという点で、私たちは空気感染に対して盲点を持っていました」と、MITの流体病原体伝播研究室長であり、土木環境工学および機械工学の准教授、そしてMIT医療工学・科学研究所のコアファカルティメンバーでもあるリディア・ブロイバ(Lydia Bourouiba)博士は述べています。「今、私たちはこれらの遺伝子を通じて、結核菌が自身を守るためにどのようなツールを使っているのか、その手がかりを得ました」。 「も

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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