次世代メタゲノムシーケンス(mNGS)による画期的な感染症診断法:UCSFの研究成果
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)で開発されたゲノム検査が、脳脊髄液(CSF)中のほぼすべての病原体を迅速に検出できることが実証されました。この検査は、髄膜炎や脳炎などの神経感染症の診断を大幅に改善する可能性を秘めており、新たなウイルスパンデミックの脅威を早期に発見する役割も期待されています。検査は、メタゲノム次世代シーケンス(mNGS)と呼ばれる強力なゲノム解析技術を使用します。これは、サンプル中のRNAやDNAを網羅的に解析し、1種類の病原体に絞らずに検出することが可能です。
「この技術は見た目には単純ですが、複数の検査を1つの検査で代替することで、感染症診断の試行錯誤をなくすことができます」と、UCSFの検査医学・感染症学教授であり、今回の研究の責任著者であるチャールズ・チウ博士(Charles Chiu, MD, PhD)は述べています。
神経感染症の診断におけるmNGSの成功
2014年にチウ博士らは、この技術を用いて重篤な症状を示していた少年を診断しました。他の検査では原因が特定できませんでしたが、UCSFの検査により48時間以内にレプトスピラ症が判明。ペニシリンによる治療で完全に回復しました。その後、このmNGS検査はUCSFで標準化され、全米の病院や診療所からCSFサンプルが送られるようになりました。
2024年11月12日付けのNature Medicineに掲載された論文「Seven-Year Performance of a Clinical Metagenomic Next-Generation Sequencing Test for Diagnosis of Central Nervous System Infections」によれば、UCSFが2016年から2023年にかけて解析した約5,000件のCSFサンプルのうち、14.4%に感染が確認され、病原体の特定成功率は86%に達しました。この成果により、mNGS検査は神経感染症診断の重要なツールとしての地位を確立しました。
呼吸器感染症におけるmNGSの新展開
Nature Communicationsに同日発表された別の研究「Laboratory Validation of a Clinical Metagenomic Next-Generation Sequencing Assay for Respiratory Virus Detection and Discovery」では、呼吸器液中の病原体検出にmNGSを適用し、自動化の成功が報告されました。新たな検査法は、SARS-CoV-2やインフルエンザウイルス、RSウイルスなどのパンデミックの原因となり得るウイルスを、サンプル中のごく微量からも検出可能です。処理時間は12~24時間と、迅速な診断が可能となりました。
医療とパンデミック対策への貢献
神経感染症や呼吸器感染症の診断におけるmNGSの活用は、医療現場において以下のような貢献をもたらすと期待されています:
迅速な診断:従来の検査法よりも早く病原体を特定し、治療の迅速な開始を可能に。
パンデミック早期警戒システム:新興ウイルス株や未知の病原体の検出能力を備える。
医療費削減:早期診断と治療により、長期化する入院や不要な検査を減少。
さらに、CSFおよび呼吸器液のmNGS検査は米国食品医薬品局(FDA)からブレークスルー機器認定を受けており、将来的な普及が見込まれています。
写真:チャールズ・チウ博士(Charles Chiu, MD, PhD)
[News release] [Nature Medicine article] [Nature Communications article]



